禅の語録を読む講座
早いもので、一月ももう終わってしまいました。
年が明けたと思いきや、バタバタとするうちに、修行道場の大摂心となり、終わりともう一月も尽きてしまいました。
修行道場では解制といって、雪安居が終わり、少し修行が緩やかになります。
ご自身のお寺に帰ってもよい期間でもあります。
もっとも日常の修行はなんら変わることはないのですが、気分としてゆったりしています。
明日が二月二日で節分であります。
節分というと、『広辞苑』には、まず
「①季節の移り変わる時、すなわち立春・立夏・立秋・立冬の前日の称。」とありますように、季節の分かれ目なのであります。
それが今や立春の前の日の節分だけが親しまれています。
暦では、今年の立春が二月三日なので二日が節分となります。
この節分に豆まきを行うのであります。
『広辞苑』の節分の解説にも
「②特に立春の前日の称。この日の夕暮、柊の枝に鰯の頭を刺したものを戸口に立て、鬼打豆と称して炒った大豆をまく習慣がある。」
と書かれています。
神社やお寺では盛大に豆まきを行っているところも多いと思います。
「豆まき」とはそもそも何だろうかと思って『広辞苑』で学んでみると、
「節分の追儺に、「福は内、鬼は外」と唱えながら豆をまくこと。」と解説されています。
疫病や天変地異などがないように、鬼に見立てて追い払ったのかと察します。
また今年は、ちょうど、明日の節分が、鎌倉エフエムのラジオ生放送に出ますので、この鬼について話をしようと思っています。
午前十時から二時間の番組です。
今はインターネットから聞く人が多いようです。
鎌倉エフエムのホームページから聞けます。
一月の末には、季刊『禅文化』が発行されました。
小特集は、『「一休」をどうみるか 多面性の魅力』であります。
今回もとても内容が充実しています。
届いて手にとってみていると、時間が経つのを忘れて読みふけってしまいます。
小特集は一休さんについて、芳澤勝弘先生、飯島孝良先生、そしてディディエ・ダヴァン先生のお三方が書いてくださっています。
それと禅文研究所六十周年を迎えてということで、松竹寛山理事長をはじめ、禅文化賞を受賞された西村恵信先生、そして石井修道先生が寄稿してくださっています。
それから六十周年の記念講演「白隠禅師と達磨像」という芳澤先生の講演録も掲載されています。
連載はいつもの通りどれも読み応えがあります。
それから来月の三月一日、禅文化研究所主催で『禅宗語録 入門講座「禅を読む」』という講座が開催されます。
昨年の禅文化六十周年を記念して小川隆先生の『禅宗語録入門読本』という本を出版しました。
この出版記念の行事を是非とも開催したいと思って企画したものです。
会場は湯島の麟祥院であります。
午後一時から開会です。
まずはじめに
「体験講座 体で読む禅「公案禅実践のためのウォーミングアップ・エクササイズ」と題して禅文化研究所理事長であり平林僧堂師家であられる松竹寛山老師が実践講座を開いてくださいます。
これもとても貴重な講座であります。
松竹老師は合気道なども修められ、禅の修行を極めて、心理学も深く学ばれいるので、今の私たちの為に親切なエクササイズを考えてくださっています。
続いて第二講で、「講演」のその一が『禅の書物の読まれかた「日本における禅籍の受容と応用」』と題してディディエ・ダヴァン先生がお話くださいます。
それから第三講が『禅の語録を読んでみる「“尋思去”(じんしこ)」』という小川隆先生のご講演であります。
そのご講演を受けて、小川先生と私が、「今、禅の語録をどう読むか?」と題して対談をします。
そして質疑応答を受けるという内容であります。
とても充実した内容の講座でありますので、是非ともおすすめします。
今や本を作りましたというだけでは、買ってもらえないのであります。
いかに本のことを知ってもらうか、手にとってもらうか努力しないといけません。
そんな次第で昨年からあれこれ企画を考えて行うのであります。
この本の出版には思い入れがあります。
これはもともと季刊『禅文化』に小川先生が連載されていたものがもとになっています。
二〇〇八年の七月から二〇一七年の一〇月まで連載されたものです。
一年四回の発行で、合計三十二回の連載なのです。
よくこれだけ連載してくださったと思います。
私もこれが書籍化されるといいなと思っていました。
研究所の理事になって、理事会にでると、連載が終わった後には、今後の出版計画として、この連載を単著にする企画が掲載されていました。
楽しみにしていたのですが、いっこうに出版される気配がないのです。
理事として何度か、いつの出版かと質問しても、今小川先生の校正をお願いしているところという返事であります。
そこで一昨年所長に就任して、この本の出版についてどうなっているかと聞いてみると依然として校正を依頼したままでめどは立っていないというのでした。
そこでこれは、期限をつけてお願いするのが一番だと思って、六十周年記念出版として小川先生のお願いしたのでした。
小川先生の「読書案内とあとがき」には
「……二〇二四年の初めのことでした。
ある定例の講座で、禅文化研究所理事長の松竹寛山老師、所長の横田南嶺老師、理事の河野徹山老師の三老師にお目にかかった折、突如、 禅文化研究所創立六十周年の節目に合わせて必ずこの書物を完成するように、と、厳命が下されたのです。
厳命といっても、決して厳しい口調ではなく、三老師ともきわめて鄭重で温和な姿勢でお話しくださったのですが、お一人ずつでも深く重厚な存在感のある老師が三人も目の前にいらっしゃると、いくらやさしく話していただいても、やっぱり、有無を言わせぬ何かがあります。
私は、考える暇もなく、はい、がんばります、と、いつになく殊勝な気持ちで応えていました。」
と書いてくださっています。
「厳命」とは恐れ多いことで、私としてはおそるおそるお願いしたつもりでありました。
私は、もうあとは校正だけすればいいのかと思っていたのですが、小川先生は、綿密に改稿校正を繰り返してくださり、更には連載にはなかった三十三講まで加筆くださったのでした。
かくして実に素晴らしい本となったのでした。
これは多くの方に手に取って学んでもらいたいと願うのであります。
横田南嶺